たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
その声に惟の表情が一気に明るくなる。普段であればみることのできない彼の姿に思わず驚く拓実だが、それだけ必死なのだろうと思うことにしている。

そして、おもむろにデスクの受話器を取ると、何かを告げている。そのまま、彼は惟の顔を正面からみつめていた。



「亜紀ちゃん、呼びましたよ。もうちょっとしたら来てくれると思うけど、落ちついて会えます?」


「どうして、そんなこと訊くの?」


「だって、ここのところ亜紀ちゃんに会ってないんでしょう? 勢い余って、僕の目の前で襲うなんてこと、しないでくださいよ」



拓実のその声に惟は心底嫌そうな表情をみせる。もっとも、拓実が危惧していることをやりかねないというのは、惟自身が一番よく知っている。だからなのか、彼は口元を隠すようにして拓実の声に応えている。



「多分、大丈夫だと思うよ。うん。ここで襲ったりしたら間違いなく亜紀に愛想を尽かされる。でも、ハグしてキスくらいは許してくれるだろう?」


「ま、それくらいなら。って、何を言わせるんです。それより、本気で僕の目の前でやろうなんて思ってるんじゃないでしょうね」



惟の言葉に、今度は拓実が顔色を変えている。だが、ようやく亜紀と会える。そう思った惟がいつもの平静さを取り戻しているのは間違いない。

となると、先ほどまでの力関係は完全に逆転する。そのことを身にしみて感じている拓実は、肩をすくめて叫ぶことしかできない。
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