たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
そう叫ぶ亜紀は、完全に惟のことを無視している。その姿に拓実は思わずため息をつくことしかできない。そして、一方の惟は彼女の首筋にうっすらと残る痕を目ざとく見つけていた。

この痕をつけたのは、自分ではない。では、これがいつ、誰につけられたものであるのか。

その答えを惟は知っていると思っている。そして、これが彼女から拒絶された原因であるだろうとも感じている。だからこそ、惟は亜紀に確かめるような声で問いかけていた。



「亜紀。その首筋にある痕つけたのって、アンジーでしょう?」



思いもよらぬことを告げられたことで、亜紀の体がピクンとなる。そのまま、首筋を隠すようにした彼女の体が小刻みに震えている。そんな亜紀の肩にそっと手を置いた惟は、優しい声で彼女に囁きかける。



「気にしなくてもいいの。僕は知っていたから。それに、これが亜紀のせいじゃないってことも分かってる。だから、こんなことで僕に会えないなんて言わないで」


「でも……」


「そうでしょう? それとも、アンジーと何かあったの? だから、僕に会えないって言ったの?」



惟の声に亜紀はふるふると首を横に振る。それでも、アンジーから告げられた言葉は頭から離れないのだろう。なかなか惟の顔をみることができない。そんな彼女に、彼の声はどこまでも甘く響いていく。



「ねえ、亜紀。ちゃんと訳を教えて。僕に会えないって言ったのは、これがあったからだよね? 僕が見て、誤解すると思ってたんだよね。だったら、気にする必要、なかったんだよ」


「本当、なの? 本当にこんなのつけられたの、気にしないの?」
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