たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
先ほどまでは間違いなく亜紀が惟を拒絶していた。しかし、今の二人からは甘い雰囲気しか感じられない。どう見ても濡れ場としか表現できないシーン。それを目にしたことで顔を真っ赤にした拓実が大声を上げてくる。



「た、惟さん……僕の前でそこまでのするの? そりゃ、亜紀ちゃん、完全に蕩けてたけど……でも、見たくなかったってば!」



よもや目の前で見せつけられるとは思ってもいなかったのだろう。拓実の声は遠慮のないものになっていく。だが、惟がそれに応える気配はない。彼は腕の中にいる亜紀に囁きかけるだけ。



「ねえ、亜紀。分かってるの? 僕は亜紀しかみてないよ。今すぐにでも君が欲しい」


「嘘! だって、あの時、女の人と仲良く歩いてたじゃない。あの人、お店にいた人だった。私より、あの人の方がいいんでしょう? だったら、無理しないでよ!」


「亜紀こそ分かってない。あれはあっちが勝手にくっついてきたんだ。僕にすれば迷惑でしかなかったんだ。嘘だと思うなら、ラ・メールのマスターにきいて。あの人はちゃんと知ってるから」



その言葉にも亜紀は頭を振り、信じないというような顔をする。そんな彼女の姿に苛立ちを感じたのだろう。惟はまた彼女の唇をふさいでいる。

彼女の細い体をしっかりと抱きしめ、何度も角度を変えて交わされる口づけ。しかし、それはどちらかというと奪うという表現の方が相応しいだろう。

息をすることも許さないほど激しいそれに、亜紀はついていくことができなくなっている。生理的な苦しさも混じっているのか、うっすらと涙を浮かべ、拒絶するように頭を振っている。そんな彼女をしっかりと抑えつけた惟が、キスを止める気配はない。
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