たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
玲子の要求は実にシンプル。しかし、亜紀にとってそれに頷くことができるはずもない。なんとかしてそれ以外の条件で離してもらうことはできないのだろうか。そう思いながらペチペチと玲子の腕を叩く亜紀。だが、相手はまるで堪えていないのか、抱きしめる力は強くなるだけ。

これ以上は耐えられない。半ば顔面蒼白になった亜紀がそう思う中、呆れたような声が玲子の背後からかけられていた。



「玲子。あんまり我がまま言うんじゃないよ。亜紀ちゃんも困っているだろう?」


「たっちゃん、そんなことないわよ。亜紀ちゃん、困ってないわよね?」



ニッコリと笑いながら玲子はそう告げる。だが、それに亜紀が頷こうと思っているはずもない。それどころか、ようやく離してもらえる可能性ができた。そう思っている彼女は必死になって玲子に訴えかけている。



「おばさま、苦しいんで離してください!」


「ほら、玲子。君は困ってないって思ってるだろうけど、亜紀ちゃん本人はそうじゃないみたいだよ。だったら、この場は君が折れるしかないんじゃないの?」


「たっちゃんの意地悪。私、娘が欲しかったのよ。だから、惟が選んだ相手ならどんな子でも認めるつもりだったけど、こんなに可愛くなってるだなんて。もう、今すぐにお嫁に来て」



そう言うなり、玲子は今までよりも強い力で亜紀を抱きしめてくる。その力があまりにも強いせいだろう。亜紀は思わずカエルが潰れたような声を出すことしかできない。そのまま、彼女は玲子を諭す相手に必死になって助けを求めていた。



「山県のおじさま……お願いだから、なんとかしてください……私、このままじゃ、死んじゃう」
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