たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
彼のその声に頷いた亜紀はゆっくりとステージへと足を踏み出している。

そこはキラキラとした光に溢れる場所。それまでのきらびやかな照明が落ちついたものになり、音楽もゆったりしたものになっている。それが、こういう場所に慣れていない自分に対する配慮なのだ。そう思った亜紀は、しゃんと背筋を伸ばすと、一歩ずつステージを歩いていく。

まだその顔には緊張の色が残っている。だが、それが初々しさを醸し出しているのも間違いない。ステージを見守る観客はそんな彼女を温かく見守っている。

そんな視線の中ランウェイを端まで歩いた亜紀は、ようやく微笑みを浮かべるだけの余裕が生まれてきていた。

華のような笑顔が清楚なデザインのマリエを彩る。見ている人はその姿に見とれてしまうのだろう。それまで以上に大きな拍手が巻き起こる。それに包まれるように亜紀は大きくターンをする。

その瞬間、それまで流れていた曲が別のものに変わる。

印象的な冒頭のフレーズ。重ねられていく音。これってウェディング・マーチじゃないか。そう思った亜紀は一瞬、歩く足を止めてしまっている。

しかし、ここで止ってしまうわけにはいかない。そのことを知っている彼女は、ゆっくりとランウェイを歩き始めている。しかし、その胸の内がザワザワとしているのは間違いない。

どうして、ここでこの曲が流れるのだろう。アンジーはこんなこと言っていなかった。そんな思いだけが彼女の中では大きくなっていく。

しかし、だからといってキョロキョロできるはずがない。そんなことをすれば、ここまでやってきたことが台無しになる。そう思う亜紀は、真っ直ぐ前を向いて歩いていく。
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