たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
彼のそんな言葉に、俯いていた亜紀の顔がガバっと上げられる。もっとも、その顔は今にも湯気が出そうなほど真っ赤。そんな顔で「無理です!」と叫ぶ彼女の迫力に、思わず惟の手が緩む。

その隙に、脱兎のごとく亜紀は逃げ出す。そんな彼女の後姿を惟は見送っているだけ。それでも、その顔にはこれからのことを期待するような色が間違いなく浮かんでいるのだった。



◇◆◇◆◇



「信じられない! 本当に、信じられないったら!」



熱烈としか言いようのない惟のアピールからなんとか逃げ出した亜紀は、部屋でそう叫ぶことしかできない。今の彼女は、まだ顔を真っ赤にしたまま。そんな姿を部屋に入ってくるであろう雅弥に見られたくない彼女は、ベッドに勢いよくダイブする。

もっとも、そのために着ている制服がしわくちゃになるが、気にもしていない。今の彼女が気にしているのは、先ほどまで一緒にいた惟の言動でしかないからだ。

そして、落ちついて考えれば考えるほど、彼の考えていることが分からなくなってくる。こうなると、彼女の頭の中ではハテナマークだけが量産されていくが、この疑問に答えられる人物などいるはずがない。だからこそ、彼女はうつぶせになったままで独り言を繰り返す。



「本当に、あの人って何を考えてるのよ。結婚が契約だっていうんなら、そのままクールにしていてよ。それなのに、あんなに甘い顔してくるなんて、反則じゃない」



今の亜紀は惟の言葉の数々に過剰に反応している状態。しかし、それも仕方がない。なんといっても、相手は王子様といってもいいほどに整った容姿をしていたのだ。そんな相手に抱きしめられて、甘い言葉を囁かれる。これで意識しない方がおかしい。そんなことを彼女は思っている。

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