たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「わ、カッコいい!」



思わず、そんな言葉が口から飛び出してくる。しかし、それも無理なことではないだろう。

先ほどまでなかったはずの車が停まっている。それにもたれるようにして立っている男性。彼に白綾のお嬢様方が反応しているのだということは、由紀子にはよく分かる。なにしろ、彼女も同じようにその相手にみとれているからだ。



「イケメンってあんな人のこと言うんだろうな……でも、誰かを待ってる? そんな感じよね」



その相手はたまに腕時計に目を落とすと、校門の中へと視線をやっている。特に焦っているという様子ではないが、その姿は間違いなく人を待っている。そんな思いを由紀子は抱いている。

しかし、見れば見るほど見惚れるほどの極上の相手。仕立てのいいスーツを着込なしている姿からは、タキシードを着てバラの花束を持っていてもおかしくないと思えるほどのもの。

そんな、映画にでも出てきそうなシーンを想像する由紀子の顔が一気に赤くなっていく。その時、「お待たせ」という明るい声と一緒に、亜紀が由紀子に向かって飛びついてきていた。



「あ、亜紀!?」
「亜紀ちゃん!」



自分が亜紀を呼ぶ声と同時に彼女にかけられる甘いテノール。一体、誰なのだろうと思う由紀子の耳に「ゲッ」という亜紀の嫌そうな声も響いてくる。この状況の意味が分からない彼女だが、甘い声に逆らうこともできない。亜紀にしがみつかれたままで首を後ろに向けている。

そんな彼女の目の前には、先ほどまで車のそばで佇んでいたイケメンが満面の笑みを浮かべている。これは夢ではないのだろうか。そう思う由紀子の耳に、どこか引きつった亜紀の声が響く。

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