たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「た、惟さん。どうして、ここに?」


「どうしてって、分からない? 亜紀ちゃんに会いに来たんだけど。よければ、デートしない?」



よもやこんなところで誘われるとは思ってもいなかったのだろう。亜紀は顔を真っ赤にすると金魚のように口をパクパクさせるしかない。そんな彼女に、惟は極上の笑顔を向けると「ダメかな?」と囁きかける。それに対して、亜紀は間髪をいれずに反応を返している。



「ダメです! だって、今日は友だちと約束しているんです!」


「そうなんだ。たしかに、急に誘っても都合があるよね。じゃあ、友だちと楽しんでおいで」



そう言いながらも、惟がそばから離れようとしない。そのことに、亜紀は不思議そうな表情を浮かべている。彼女のそんな様子に気がついたのだろう。惟は彼女の頬に手を伸ばしながら問いかけていた。



「ちょっと気になったんだけどね。亜紀ちゃんは友だちとどこに行く約束してるの?」


「え、えっと……近くのファミレス? ゆっくり話したいと思ってるし」



惟の声に亜紀は視線を泳がせながらそう応えている。なにしろ、目の前にいる惟はイケメンとしかいいようがない。そんな相手に見つめられて、平気でいられるはずがない。今の亜紀の心境は間違いなくそうだろう。そして、彼女と一緒にいる由紀子も顔を赤くしながら、惟の顔をじっと見ている。

もっとも、彼女にすれば亜紀と惟の関係というのも気になるのだろう。目立たないように亜紀の袖を引きながら、「どうなってるのよ」と問いかけるのも忘れてはいない。それに対して、どう返事をしようと悩む亜紀の耳に、ちょっと焦ったような惟の声が届いていた。

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