たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
このままでは雰囲気にのまれてしまう。そう思っている亜紀は、なんとかしてそうならないようにと一言ずつ区切るようにして言葉を紡ぐ。そんな彼女の様子を楽しそうな表情で眺めている由紀子。

その顔には、この分では面白い話がきけそうだと、楽しみにしているような気配がないではない。もっとも、今の亜紀にはそこまでを感じるゆとりがない。

惟の行動にすっかりドギマギしてしまっている彼女は顔を真っ赤にしたまま、なんとかして彼の腕から逃れようとジタバタしている。その時、店の奥にいた人物が惟を認めると、ゆっくりと声をかけてきていた。



「山県様ではありませんか。本当にお久しぶりで。ようやく、日本に落ちつかれるおつもりになられましたか?」


「マスター、久しぶり。うん、そのつもり。あ、彼女たちにマスターの紅茶お願い」


「かしこまりました。ところで、そちらのお二方は? 妹さんではありませんよね?」



惟が高校の制服を着ている女の子を二人も連れていることに驚いたのだろう。ラ・メールのマスターはそんなことを問いかけている。それに対して、惟はサラリと切り返していた。



「妹じゃないよ。それに、僕に妹がいないことはよく知っているでしょう。彼女たちは僕の大事な人とその友人。だから、二人もこの店に出入りしても問題ないよね」



そう言いながら、惟はグイッと亜紀の体を引き寄せている。今のこの状況はヤバい。そう思う亜紀は自由になろうとバタバタするが、それが叶うはずもない。一方、そんな二人を見たマスターは一人で納得したように頷き、由紀子は目をキラキラさせて頬を手で挟んでいる。

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