たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「そこでそう返してくれるの? 亜紀ちゃんって本当に可愛らしいね。でも、明日は期待しといてね。そろそろ、僕のことをちゃんと見て欲しいからね。わかってくれるよね、あーちゃん」



最後になんだか呼ばれたような気がする。そんな気がした亜紀は首を傾げるが、惟は『なんでもないよ』と言いながら車の運転を続ける。そのまま、彼女を一條邸に送り届けた惟の顔には、明日のことを楽しみにしている表情しか浮かんでいなかった。



◇◆◇◆◇



その日の夜――


柔らかな羽根布団にくるまれた亜紀は、久しぶりにいつもの夢をみていた。だが、そこに浮かぶ光景が微妙に違う。そのことを疑問に思いつつも、夢の中で景色はどんどんと移っていく。

そして、いつもと同じバラのアーチの下で誰かにギュッと抱きしめられる。そこまで夢が進んだ時、彼女の耳には今まで思い出せなかった声がハッキリと響いてきていた。



「泣いていいんだよ。泣かないと壊れちゃう」


「うん……でも、さびしいの……ぱぱもままももういないなんて、しんじられない……」


「大丈夫。僕が一緒にいてあげるから。あーちゃんを一人になんてしないから」


「ほんと?」


「うん、本当。でも、今すぐは無理かな? あーちゃんが大きくなって、素敵なレディーになった時に迎えにいくよ。だから、それまで僕のこと忘れないで」



バラの甘い香りに負けないような甘い言葉が彼女の耳に届いてくる。この時の亜紀はまだ5歳。それでも、言葉に含まれる意味はわかるのだろう。コクリと小さく頷いている。

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