たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
だが、そう思ってはいても亜紀自身が惟のことを意識し始めているのは事実。だからこそ、彼の言葉や態度が気になって仕方がないのだ。もっとも、恋愛経験値0の彼女にそのことが分かるはずもない。ただ、彼女は自分の気持ちが分からずにどうすればいいのか悩むだけ。



「ほんとに、どうすればいいんだろう?」



今の彼女はそうやって呟くことしかできない。だが、今日が惟と約束したデートの日だということは覚えているのだろう。正直、気が進まない部分があるのだが、不思議と気持ちが浮き立つ部分もある。そのことに首を傾げながら、亜紀は出かけるための準備を始めるしかないのだった。



◇◆◇◆◇



「亜紀ちゃん、美味しい?」


「は、はい。どれもとっても」


「喜んでくれて嬉しいな。本当に亜紀ちゃんって幸せそうに食べるよね」


「馬鹿にしてるんですか?」


「そんなことないよ。だって、そんな顔をして食べる姿を見ているのは楽しいもの。つまらない顔して食べても美味しくないでしょう?」



惟の言葉に亜紀はコクリと頷いている。彼女自身、悩んでいる部分はあるが、今日は楽しい時間を過ごさせてもらっていた。その仕上げとばかりに連れてこられたのが今いるホテル。

地上15階にあるレストランは展望がいいことでも知られている。この場所に興味があった亜紀にすれば、これは願ってもないチャンス。おまけに、美味しい料理までごちそうになっている。すっかり表情が緩んだ彼女がニコニコしているのは当然のことだった。

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