たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「本当に、これって似合ってるのかな?」


「はい。とてもよく似合っておられますよ。お嬢様は可愛らしいという部分もありますが、お美しいと申し上げた方がよろしいですからね。白綾の制服が本当にお似合いになっておられます」



独り言に返事をされるのは恥ずかしい。そう思った亜紀が振り返った先には雅弥がいる。そのことに気がついた彼女は、どこか咎めるような視線を彼に向けていた。



「竹原さん。勝手に入ってこないでって言わなかった?」


「きちんと扉はノックさせていただきました。たしかにお返事がないままに入りましたのは失礼でしたが、あまりゆっくりなさいますと朝食の時間がなくなってしまいますので」



落ちついた調子でそう告げる雅弥の姿に、亜紀はまたため息をつくことしかできない。だが、彼が言っていることが間違っているわけではない。そのことを知っている亜紀は、ゆっくりと部屋から出ようとしている。その時、「お嬢様、お手をどうぞ」という柔らかな声と差し出される手。

これは、雅弥にしてみれば仕事の一つ。そのことが分かっている亜紀であっても、長身で整った容姿の男性に手を取られることは、どこか気恥かしい。もっとも、最初の頃のように真っ赤になってしまうことがなくなったあたり、慣れてきたんだろうか。そんなことも亜紀は思っている。

なにしろ、この雅弥という相手が人目を引くということは間違いないからだ。いつも穏やかな表情を浮かべ、何事もそつなくこなす姿に好感を覚えない相手はいないだろう。実際、彼に送り迎えされているということで、クラスの面々からは羨ましがられている。

たしかに、そこらにいるアイドルにも負けないような容姿なら、それも当然かもしれない。そんなことをこの頃の彼女は思っている。そんな彼女の口からポツリと言葉が漏れている。
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