たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「ここって、実は前から来てみたかったんです」


「そうなの? だったら、拓実君に頼めばよかったのに。ここ、一條のグループ企業だよ」


「え? 知らなかった。で、中学の頃、友人とここでお食事とかできたらいいだろうなって、話していたことあるんです」


「そうなんだ。じゃあ、夢が叶った?」


「はい。おまけに惟さんみたいな素敵な人と一緒だし。もう、言うことないです」


「嬉しいこと言ってくれるね。あ、ちょっとじっとしてて」



そう言いながら惟はグイッと亜紀の方へ身を乗り出してくる。何かがあるのかと体を固くした彼女の頬にスッと触れる指先。それにクリームがついているのを見た亜紀は羞恥心からか顔を真っ赤にしてしまっていた。



「す、すみません……」


「いいよ。可愛らしいんだし。それより、食事は堪能してくれた?」


「はい。ありがとうございます。でも、そろそろ帰らないと……」



ふと、今の時間を気にした亜紀が時計に目を落としている。そんな彼女に、惟は笑いながら声をかけていた。



「まだ、気にすることはないよ。ちゃんと送ってあげるんだし」


「それはそうなんですけど……あんまり遅くなるとお兄ちゃんが心配するし……」


「拓実君ってほんとに亜紀ちゃんに甘いよね。っていうより、過保護? 僕が一緒にいるから、心配することなんてないのにね」

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