最後の夏休み Last Summer Days.
「………だってここは、タカヒロとの思い出の海だったの。



アイツにとってはお決まりのデートコースだったかもしれないけど、



水族館も湘南の海もアタシにとっては特別だった。



だからその思い出の中で死にたいと思った。



でも―――アタシは生きてるよ。



小説家がいたおかげでアタシは生きてる。



ここがアタシの居場所じゃないかもしれない。



だけど、何かを見付けるまでは帰れない。



帰りたくないの」



アタシを見ている小説家の瞳は、最初に出逢った時と同じだった。



真っ直ぐで、深い色をしている。



「好きにしなよ」



背中を向けて歩いていってしまう小説家の後ろ姿を、アタシは追いかけられなかった。



追いかけてどんな言葉で彼に話せばいいかわからなくて、


水槽のトンネルに取り残されて、



泣いた。



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