最後の夏休み Last Summer Days.
「椎名さんですが、1年ほど前に自費出版されていたようです。



私の知人に彼の作品の編集を担当した者がおりまして、携帯電話に連絡を取ってもらったんですがつながりませんでした」



「………そうですか」



「ただ、打ち合わせの時に一度だけ友人の女性が同席されたことがありまして」



「………どんな方なんですか?」



「それが、T女学院の学生さんで。



名前は、―――ナリタヒカリさん、というらしいのですが」



「―――ナリタヒカリ」



その名前、聞いたことがある。



「私に調べることができたのはここまででした。



お力になれなくてすみませんでした」



もうずっと前。



夕立のカミナリが落ちるようなイメージ。



「いいえ。お忙しいのに無理なお願いですみませんでした。ありがとうございました」



そう言ってケータイを閉じる。


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