最後の夏休み Last Summer Days.
その日は、雲一つない晴れた空だった。



サエコさんに借りた速そうな車を小説家が運転して、横浜へドライブに出かけた。



と言っても目的は、小説家の仕事を手伝うことだったけど。



連れてこられた場所は市内のビルの2階にある、クリニックだった。



「ここで待ってて」



待合室にアタシを残して、小説家は奥へと入っていく。



シンプルな白い待合室は薄いカーテンでしきられていて、他に誰がいるかはわからなかった。



「カニクリ。お待たせ」



アタシを迎えに来た小説家についていくと、受付に女のコが立っていた。



「ナリタヒカリさんね。2番の部屋に入ってお待ち下さい」



スタッフに言われた彼女と目が合った。



まるで突然の夕立で、落ちるカミナリの光のような、鋭い眼差し。



アタシはそれが怖くてすぐに目をそらした。



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