最後の夏休み Last Summer Days.
「どうした? カニクリ」



「何でもない」



何でもない、なんて嘘だった。



あの目が怖かった。



だから、ここに来るのが怖くなって、月に一度のカウンセリングからアタシは逃げた。



それは、今も。



思い出したよ。



無意識に記憶の奥底にしまっていた、あの瞳のヒカリ。



「栄川(エイカワ)先生、入ります」



後ろからの視線を感じていたアタシはその部屋に逃げるように入った。



部屋の中には、明るい窓を背にして、白衣を来た女のヒトが待っていた。


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