最後の夏休み Last Summer Days.
S図書館は大きな公園の中に建てられた洋館のような造りだった。



そのそばにある空まで届きそうな大きな木の下で、



女のコが本を読んでいる。



思い出したように吹く風が、わずかに湿った涼しい空気を運んでいた。



「ナリタヒカリさん?」



カフェ・ラテみたいな色のゆるい巻き髪から大きな瞳がアタシを見上げる。



「アンタが、カニクリ?」



見覚えがあるまだ幼い顔立ち、それを隠すようなピンクのTシャツとショーパンは、



シブヤにいるギャルだった。



「K大付属? お嬢じゃん」



立ち上がったヒカリがアタシの制服を見て言った。



「何でカズヤのことが聞きたいの?」



右手をポケットに入れて、アタシをにらんでいる。



< 138 / 201 >

この作品をシェア

pagetop