最後の夏休み Last Summer Days.
「―――カニクリ。ただいま」



柔らかな月明かりに照らされたイタズラ好きなコドモの無邪気な笑顔で、彼が立っていた。



昼間と同じユーズドのTシャツとジーンズ、茶色のメッシュが入った長めの髪。



あの頃の彼とは違う―――



「カズヤ……さん………」



そう呼ぶと彼は微笑んだ。



「昔みたいに呼んでよ。小説家って」



その笑顔が懐かしくて嬉しくて、涙があふれた。



「………小説家………?」



声にしようとすると余計に涙がアタシの言葉をつまらせる。


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