最後の夏休み Last Summer Days.
やっと暗闇に慣れてきた瞳に映る彼の顔は、小説家の表情ではなかった。



「はァ!? この部屋でセックスしたんだろ!? 



知ってんだよ!? だからオレを小説家だと思えよ!」



小説家は笑顔の奥にいつも悲しみを隠していた。



「―――アナタ、誰? 小説家じゃないよね?」



アタシは冷静になって言う。



彼は黙って、アタシをにらんだ。



「このワンピース憶えてる? 小説家がアタシに買ってくれたよね」



ホントの小説家なら、わかるよね?



「ワンピース? ああ……憶えてるよ。オレがプレゼントしたヤツだろ?」



忘れるはずがないよね。



だってあんなに愛したミヤさんへのプレゼントだもんね。



一生懸命選んでいるアナタの姿が、笑えちゃうくらい、



アタシには想像できるよ。
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