最後の夏休み Last Summer Days.
少し欠けた月が照らす道路を抜けて、



誰もいない夜の砂浜に立つと、



真っ暗な海にも月が浮かんでいた。



どの場所にだって小説家との思い出があるのに、彼はいない。



そんなの、たえられないよ。



「小説家!」



海にかかる月明かりの橋を渡るようにアタシは歩き出した。



静かな波がアタシの足を重くするけど止まらずに。



白いワンピースの裾が海面に広がる。



まるで、クラゲだ。



そう思うと少し笑えたけど、悲しかった。


< 156 / 201 >

この作品をシェア

pagetop