最後の夏休み Last Summer Days.
強い力で腕を引かれ、アタシの意識は無意識の海から舞い戻る。



肺に残っていた空気すら吐き出して、呼吸ができない。



体に力が入らなくて、



それでもアタシの手を引くのが誰か見たくて、



薄く開けたマブタの隙間から見えたのは、



揺れる月明かりに照らされた、小説家だった。



そして、アタシを抱きよせて、キスをする。



直接送り込まれた空気がアタシの全身をゆっくりと静かにめぐる。



「ねぇ、小説家。



ホントはね、わかってたよ。



アナタが言ってくれたこと。



思ってること。



―――わかってたんだよ」


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