最後の夏休み Last Summer Days.
「あっそ」



素っ気なく言って彼はアタシを真っ直ぐ見た。



「一つだけ教えてくれよ」



「何?」



「どうしたらオレは、アイツになれる?」



真剣な眼差しが、痛かった。



「ならなくても、いいんじゃない?」



もしかしたら、この瞳はアタシの瞳だったかもしれない。



「何だよそれ」



小説家に向けていた、アタシの瞳はこんなだっただろう。



「自分らしくあればそれでいい」



自分に言うように言った。



こだわりすぎていたんだ。



小説家になることに。



小説家に会うことに。



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