最後の夏休み Last Summer Days.
「久しぶり。元気だった?」



精神科医の栄川カズネ。



「はい。元気です」



彼女は約束だった月一回のカウンセリングに行かなかったアタシを責めなかった。



「本来ならね、それは契約だから何か言うべきなんだけど、アナタは特別だったから」



と優しく笑った。



「今、彼の部屋で暮らしてるんです」



突然会って話がしたいと電話したアタシに何も言わずに了承してくれた。



「だから大学のほうが近くて」



それは嘘だ。



あのクリニックには行きたくないのが本音。



「そう。彼は―――椎名君は元気? 



辞めてから一度も連絡してこないから。



もう1年も経つのね」



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