最後の夏休み Last Summer Days.
朝ご飯を食べている時も、


荷物をまとめている時も、



「今日は何着るの?」



「………制服、着る」



小説家の声が聞きたかった。



これが最後なんて思いたくなかった。



「ねぇ、小説家。また会える?」



黙ったままアタシのTシャツをたたんでいる。



「また、ここに来てもいい?」



もっと小説家の声が聞きたいよ。



「ねぇ、小説家―――」



「ダメだよ」



手を止めてアタシを見ている小説家の瞳は、深い悲しみ色だ。



その色が変わることはない。


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