最後の夏休み Last Summer Days.
「ねぇ、小説家―――」



アタシは古びた造りの校舎に入る。



まだ新しい校舎には学生がたくさんいて活気にあふれていたのに、



ここはひっそりと静まり返っていた。



そして、アタシはノックをして一つのドアを開ける。



「栄川先生?」



窓辺に立っていた彼女は、初めて会った時と同じ笑顔で、



「いらっしゃい。入学おめでとう」



と言った。



「まさかK大に行くのをやめてまでうちの大学に来るなんて、驚いたよ」



「親にも反対されました。でも、アタシ、決めたことがあるんです」



「それは何?」



彼女はカウンセリングと同じような優しい声のトーンで、アタシの言葉の続きを待った。


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