最後の夏休み Last Summer Days.
「アタシ、今日ここに泊まるから」



ちょっとした意地悪のつもりだった。



「え? 親が心配するでしょ?」



それに、今日は帰りたくなかった。



「しないよ。………あそこはアタシの居場所なんかじゃないし」



あの部屋には帰りたくない。



思い出してしまうから。



「そうだとしてもダメだよ。知らないオトコの家に泊まるなんて」



ベランダから部屋までの1メートルが、急にすごく遠く感じた。



「小説家はそーゆーオトコなんだ」



アタシはすねたようにまた背中を見せた。



沈んでいく太陽がワンピースをオレンジ色に染めていた。



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