最後の夏休み Last Summer Days.
暗くなった部屋の中で彼はシャツを着ている。



「出かけるの?」



ホントは、不安だった。



「そろそろ、お腹空かない?」



彼にもまた、嫌われたかと、不安だった。



「今度こそファミレス行こうよ。ちゃんとサイフ持ってくから」



アタシは、笑顔でうなずいた。



「あ、でもまだローファー濡れてる」



「そっか。じゃあ、これ履きなよ」



と彼は箱から白いミュールを出してきた。



「これもカノジョの忘れ物?」



「これは―――プレゼントしたのに一回も履いてくれなかったヤツ」



苦笑いで小説家は言った。



「やっぱり、ダサ」



言われて凹む小説家は、少しだけカワイかった。
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