最後の夏休み Last Summer Days.
「………好きだったよ」



「じゃあ何で別れたの?」



「もういいじゃん。昔のことなんだから」



「まだ好きなのに?」



タバコを持ってベランダに彼は逃げた。



「そうやって自分の気持ちからも逃げるんだ」



「自分だって、―――逃げてきたじゃないか!」



振り向かないで言った小説家の足に付きまとっていたソラが驚いてベランダから逃げ出す。



「アタシは、………逃げてなんかない」



ベッドの上でヒザを抱える。



「逃げてるよ。



何があったのか知らないけど、学校からも家からも逃げてる」



アタシに小説家を責める権利なんてない。



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