最後の夏休み Last Summer Days.
「303、ノムラ?」



ローマ字で書かれた表札は間違いなく封筒に書かれていた部屋だった。



しばらく頭の中で理解できなくて立ったままでいると、ゆっくりとドアが開いた。



「私に用なんじゃないの?」



ドアから顔をのぞかせたヒトが『佐藤ミヤ』だというのはすぐにわかった。



少しやせている気はしたけど、



小説家の撮った写真の印象そのままだった。



「すみません。表札と名前が違ったので」



「ん?」



とナチュラルな茶色の長い髪を揺らして首をかしげたけど、すぐに笑った。



「結婚したから。彼は、言ってなかった?」



その微笑みが、小説家に似ていた。



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