最後の夏休み Last Summer Days.
「暑い? もう少し我慢して。今クーラーつけたから。私はなくても平気なの」



真っ直ぐな瞳で彼女はアタシを見ていた。



「それで、何の用だった?」



そう言いながらタバコに火を点ける。



「これを、お渡ししたくて」



小説家と同じタバコ。



「手紙? カズヤからね。相変わらず下手な字ね」



グレーのロングパーカーの袖から出ている手首には、消えかかった何本かの線があった。



「しばらく会ってないけど、カズヤは元気?」



吐き出される煙とただよう匂いが懐かしい。



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