オフィスの甘い獣(ケダモノ)
「だから…その見合いの話は断ってくれ…」



俺は顔だけ後部座席に向け、立脇に頭を下げた。



「最初からそう言ってくれたら…和さんも水臭いですよ」



立脇はいつもの屈託のない笑みを口許に見せて、俺の肩に手を乗せる。




「だって…お前は…」



「…俺の片思いですし…気にしないで下さい…で、和さんは細谷さんと結婚するんですか?」



「…プロポーズはしたけど…佑月の両親にはまだ…会ったコトがない」



「…和さんも結婚するんですか…」



「立脇…」



「前向いて…運転運転…」



「そーだな」



俺は前を向き、ハンドルを握った。



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