オフィスの甘い獣(ケダモノ)
和さんが台座から指輪を外して、私の左手の薬指に嵌めた。



「結婚式の指輪の交換のリハーサルだ」



「…ありがとう」



私は薬指の根元にしっかりと嵌った指輪を眺める。




「…あのさ…佑月」



「何?」



「結婚は早めにしたい」



「えっ?」




「…俺…早く…佑月と暮らしたい…」


和さんの低い声が切実だった。


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