オフィスの甘い獣(ケダモノ)
私は控室を出て…式場に向かった。



美しい花で飾られた式場内に目立つ紅のヴァージンロードと荘厳な光を放つ十字架。


私たちは列席者席に座って花婿と花嫁の登場を待つ。



「やっぱり…合わない」


「えっ!!?」


お母さんが突然…私の眼鏡を奪った。



「そのドレスに黒縁の眼鏡は合わないわ」



「眼鏡がなかったら…私…何も…」



パイプオルガンの高い音色が響き渡る。




両目と共に0,06しかないド近眼…私の裸眼の世界は凄くぼやけていた。



朝…目覚めた時の微睡に似ている…



でも、見えない方がいいかもしれない。


私…渉さんと花嫁の千寿子(チヅコ)のツーショットは辛くて見られないから。





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