オフィスの甘い獣(ケダモノ)
ふと気を緩めた刹那、その隙を狙ったような臣さんのキス。




私の思考は完全にショートしてしまい、暫く…呆然としてしまった。



回復の兆しが見えない。



唯、ボーッと彼の姿を見つめるだけ。




「先に行くよ…」

鼻腔を掠めていく彼の甘いフレグランス。


キスは軽いキスだったけど。


キスの濃密さは関係ない。キスされた事実だけが独り歩きしてしている。

私の脳裏は真っ白でガス欠状態の自動車のように身体は微動だにしない。


視線だけが彼を必死に追い駆けていた。





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