オフィスの甘い獣(ケダモノ)
私が会議室にたどり着くと…彼は迷子の子供のように自分の座る席を視線で探していた。



緊張感が漂う会議室の空気。



先ほどの暴挙に抗議したかったけど…その場に縫いとめられたような彼の姿を見て…手を差し伸べる。




そして社長の隣の席に案内した。




臣さんは私とのキスだけでは…解れない大きな緊張の塊を胸に抱いていた。



私に礼を言うけど…笑顔に違和感を感じる。




彼に優しい言葉を掛けようとした時、神宮寺社長が入室して来た。


一気に張り詰めていく会議室の空気。



みんなが立ち上がって社長に一礼する。



無機質な壁掛け時計の針が9時半ピッタリの時間を差す。
臣さんの顔見せの会議が始まった。









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