オフィスの甘い獣(ケダモノ)
「え、あ…もしかして…細谷佑月…さん?」




まるで…初対面のような言葉遣いが気になったけど。

左目の視力でしか見えないけど…顔の輪郭と髪型で臣さんだと認識した。



「…何してるの?」


「コンタクトレンズが落ちてしまって…」



「でも…この雑踏じゃあ…多分…粉々だと思うよ」



「…私もそう思います…」




私は臣さん(?)の言葉で探すのを諦めた。




「ところで片目で見えるの?」




「いえ…」



「細谷…いや佑月…こっちにおいで」


臣さんが私の右腕を引っ張る。


周囲の白い目に気づいて私も臣さんに導かれるように…舗道の脇に歩み寄った。



「ありがとうございます…会食は済まされたんですか?」

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