オフィスの甘い獣(ケダモノ)
お母さんが紛失した私の眼鏡も無事に見つかり…ぼんやりとしていた視界も元に戻った。



会社仲間と一緒にカメラに映る千寿子。



渉さんに千寿子を紹介したのはこの私ーーー・・・




唯…渉さんを義理の兄として紹介しただけなのに…二人は交際を始め、1年後にこの日を迎えた。




「…佑月…」



「え、あ…」



渉さんが一人で佇む私の隣にやって来た。


「…眼鏡…見つかったようだな」



「うん」




レンズ越しに見える世界は切なくて心臓がギュッとわし掴みされたように激しく痛む。




「憂かない顔だな…」



「別に大丈夫…気にしないで…渉さん」











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