オフィスの甘い獣(ケダモノ)
俺が退職する前に立てた立案に和が目を通して…和の戦略も考慮した新しい立案を副社長に説明する。




『みやこ呉服店』の創業は江戸時代の寛政年間。
老舗中の老舗の呉服店だ。




帝家に着物を献上したりとロイヤルブランドとしての地位も確立しているが、若者を中心に着物離れが加速している。

俺だって成人式は紋付き袴ではなくスーツで式典に出席した。





着物業界が全体的に衰退し、ここ何年も業績の悪化を辿っていた。



この立案で業績の悪化を食い止められるかは不透明。




江戸から続く伝統を守りたい思いは判るが…




「俺自身も…着物には馴染みがなくて…着物に想い出があるかと訊かれたら…成人式を終えた晴れ着姿の女とラブホに入って…」


「社長!!?」


隣に座った立脇が俺の足を踏みつける。
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