ヴィーナスになった猫

6遊覧飛行

6遊覧飛行

「きょうは、なおっちにおみやげを持ってきたからね」

 保奈美はポケットから赤いリボンを取り出すと、それをなおっちの首に巻き、頭の後ろで花結びにしてやりました。

「うふふ、なおっち、かわいいわよ」

「にゃーん」

 その時、保奈美のうしろで事務員の声がしました。

「あらー、なおっち、赤いリボンを付けてもらったの。かわいいわねー」

「んにゃー」

「なおっちたら、休憩室でごはんを食べていたのに、保奈美さんの声が聞こえたものだから、いそいで走ってきたのよ」

「そうだったんですか。なおっち、ごはん食べていたの。それじゃあ、休憩室に行こうか」

「にゃー」

保奈美が立ち上がったところに、パイロットの田中達也が入って来ました。

「やあ、おはよう。きょうも訓練飛行やるの?」

「はい、私もそのうちに田中さんのように、事業用パイロットにならなければと思っていますから。ただ、いまは多くのフライトを経験しておこうと思って」

「そう、じゃあ、むりをしないで、がんばって」

「はい、ありがとうございます」

「それじゃあ、きょうは遊らん飛行のお客があるから」

達也はそう言うと、空港事務所から出て格納庫の方に歩いて行きました。


 保奈美はなおっちにごはんを食べさせてから、小型飛行機が駐機しているスポットに向かいました。

飛行場の別のスポットでは、これから遊らん飛行をする予定のお客さんが6人来ていて、パイロットの一人から飛行コースの説明を聞いています。

保奈美はしばらくそのようすを見ていました。



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