もう一度愛してくれますか?
鞄をごそごそとさぐり、家の鍵を取り出す。


ガチャっと鍵を回し、扉を開いた。


…今日も静か。


人の気配なんて一切しない。


不自然なくらい少ない靴。


真っ暗で奥の見えない廊下。


…あたりまえか。


私以外誰もいないもんね。


「ささっ!入ってー」


「…おじゃましまーす」


挙動不審にキョロキョロと家の中を見回しながら入ってくる真城。


なんか見ていておもしろい。


「リビング行ってて!私、鞄置いてくるから。」


「え…どこ?」


あ…そーだったww


初めての家で、部屋の場所が分かったらある意味疑うよねw


「ごめん、ごめんwこっちだよ」


鞄置くなんて後ででいいか!


真城をリビングに誘導し、あたしはキッチンへと飲み物を取りに行く。


「まーしろー?何飲むー?」


「ん?何がある?」


「あ、えっとねー、コーヒー類ー、炭酸類ー、あとジュース!」


「んー。寒いからコーヒー類の何かでー」


じゃ、私が今ハマってるキャラメル味のラテにしよ♪


ささっと作って、真城の元へと持っていく。


「なぁ、親は?帰るの遅いのか?」


「あれ?前言わなかったっけ、私、親いないんだよー。」


「あ…そーだった…な…。」


あわわっ


気まずい空気になっちゃった?


もー、真城、気使わなくていいのに。


「あ、はい、ラテだよー。キャラメル味♪」


マグカップを置いて、真城の横へと座る。


「お、サンキュ」


ラテの甘い香りが部屋に広がる。


いい香りー…。


「…真城にちゃんと話してなかったよね、私の親の話。」


「え?あ、おう…。」


「私の親はね、私が小学6年生の時に、海外に出張に行ったの。
5日ぐらいで帰ってくるって言ったきり、帰ってこなくなっちゃった。
それから1度も連絡も来てないし…
だから私、捨て子なんだー。」


私が無理して笑っているのが分かったのか、真城は私を抱きしめた。


「なんでもっと早く教えてくれなかったの?」


「え、だってこんな話…皆引いちゃうもん。」


「それくらいで、俺が引くとでも思った?」


だって…



「…もっと俺に頼れ。甘えろよ。」


「…うん…、ありがとね、真城。」


ポンポンと頭をなでてくれる真城が優しくて。


思わず涙が出そうになった。


「よし!これから毎日、美月の家に来ていい?」


「え!?」


「だって、今日も寂しくて、俺を家に誘ったんだろ?」


「あ、うん。」


「美月が家で一人泣かなくていいように、俺が家に来る。」


「…ありがとう。ほんと真城は優しいね…」


「クスッ…美月には特別だよ」


そういうと、私のおでこにキスをする。


カッコよくて、優しくて、


誰よりも私の想いを理解しようとしてくれて


私、幸せ者だね。


最高の彼氏を持ったよ。


真城。


君の事が大好き過ぎて、私の胸は今にも張り裂けそうなの。
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