何故、泣くのだ。


男達を見失わない程度に
距離をおきながら私は足早に彼等を
追い続けていた。

幸い、彼等は大きな声をあげながら
草履をズルズルと引きずるようにして
練り歩いている。

これなら、多少音をたててしまっても
気づかれることはないだろう。


しばらくそうやって後を追っていると、
小さな空き地のような場所にたどり着いた。
その空き地の中央には小さな小屋が
たっていて、それ以外は何もなかった。

恐らく、茶屋か何かだろう。
小屋から出てきた前掛けを腰に巻いた
小柄な老婆に一番若く見える青年が
何か大袈裟な身ぶり手振りを加えながら
話しかけている。

すると老婆は何か二言、三言口を開き、
小屋の中へと消えて行った。
一方、男達は小屋の前に置かれた
ベンチのような物に肩を並べて腰かけた。

これは少し時間がかかると考え、
私は子猫をその場におろしやった。
子猫は腕から解放されても利口に私の
足元で座っていた。

私は男達を観察しつつ小声で
子猫に尋ねた。

「お前、名前とかないの??」

子猫は、私が自分に話し掛けていると
悟ったのか、此方を大きな目玉で
見つめてくる。

しかし返事など帰ってくるはずもなく、

「そうか、ないのか。」

と、勝手に解釈してみた。

「ならワタシが名前をつけてやろう。」

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