何故、泣くのだ。

と言ってみれば、四、五度程激しく
尻尾を左右にふり、喜びを表した。
私は引き続き男達に視線を投げ掛けながら
子猫の名前を考えた。

10分程、経ったであろう頃、
ある程度考えがついた。

ユキ

か、

チカ。

動物など飼ったことのない私は、
この子猫が雄か雌かよくわからない。

だから、どちらでも通りそうな
名前を考えた。

しかし最終的にはユキにした。
雪と幸にかけたんだ。
我ながら、いい考えだと思った。

「お前、ユキね。」

と言うと、コイツは、

「にゃーぅ」

と小さく鳴いた。
それから私がユキと呼ぶと
尻尾を振ったり、じっと見つめたり
するので、コイツはユキになった。

訳もなく小さな幸福感に包まれながら
ユキを撫でていると、男達が動き出した。

私は静かに腰をあげ、ユキを片腕に
抱き抱える。そして先程と同じように
適当な距離をあけつつ、男達を追った。


しかし、彼等の目的地はまだ先らしい。
日が暮れ始めて薄暗くなってきても
彼等が足を止めることは無かった。

頭上の空が深い紫色に変わり、
遠く彼方に真っ赤な夕陽が見え隠れ
し始めた頃、彼等はようやく道端に佇む
巨木の下で立ち止まった。

これでは、私も此処で野宿をするしかない。
しかし私は夜中でも前に進みたいのだ。




< 13 / 55 >

この作品をシェア

pagetop