何故、泣くのだ。
そこで私は男達が眠りについたあと、
寝込みを襲い、身に付けているものを
頂こうと考えた。
眠った後なら、いくら侍でも
頭の回りは遅いだろうし、周りの仲間も
状況を把握するのに時間がかかるだろう。
少しすると彼等は近くに川があるはず
だなどと話をしながら林の中へと
姿を消した。
そわそわと何気なくあさった部屋着の
ズボンのポケットから、なんと。
睡眠安定剤とケータイが出てきた。
しめた。
使える。
睡眠安定剤は、情緒不安定でなかなか
寝つけない時に使う。
それがたまたまポケットに入っていたんだ。
運がいい。
男達は戻ってきたときに火を炊こうと
木を組んでいなくなった。
その組み木の中に睡眠安定剤を置いて、
彼等が火を炊いた時辺りに充満させる
というのはどうだろうか。
これはなかなかいい案だと思った。
これでいこう。
それで私はまず、ユキを地面におろし、
錠剤の睡眠安定剤を掌に取りだした。
するとユキは、私が止める間もなく。
睡眠安定剤を口にくわえ、
茂みからとびたしてしまった。
「こらっ、ユキっ。戻ってこいっ。」
私は出来るだけ声を抑えつつユキの背に
向かって叫ぶ。
それでもユキは戻る気配を見せない。
仕方なく連れ戻そうと茂みからでるのを
躊躇していると、ユキは男達が組んだ
組み木へと向かっていってしまった。