何故、泣くのだ。
やばい。このまま男達に見つかってしまえば
ユキは格好の餌になってしまう。
ユキは組み木の周りを一度、二度
行ったり来たりしたあと、クンクンと
匂いを嗅ぐ素振りを見せた。
と、その時。
「………が………な。……」
「と………れだ……るか……」
男達の声が聞こえて来た。
私が遂に茂みを飛び出そうとしたとき、
ユキは静かに組み木の側を離れ、
走って茂みに飛び込んで来た。
それからすぐに男達が林から
姿を現した。
私は男達を警戒しつつ、ユキを抱き抱え、
口を開けさせた。
ユキは素直に口を開いたが、錠剤は
見当たらなかった。
もう溶けてしまったのか、
呑み込んでしまったのか。
しかし、ユキは一向に眠そうな素振りは
見せない。何故だ。
考えてるうちに、男達は火を炊きだした。
火は間もなく大きくなり、組み木は
あっという間に見えなくなってしまった。
煙が少しずつ上がってくる頃、
私の鼻が覚えのある微かな微臭をかぎ分けた。
精神安定剤だ。
なんてこった。