何故、泣くのだ。
こんな盗聴行為をするようになってから、
もう2年程経ったが、これまで彼女が
本音を曝すことはなかった。
でも、何だか今日は話すと思った。
いつも以上に、かなり酔っ払っている。
「おいぃ、世奈(セナ)しっかりしろよ。」
母が連れ帰った男の声がする。
「世奈の部屋どこ??」
「んー??テルくぅーんっ、こーこっ!
あたしの部屋~っ!」
酔っ払った母の声。
二人の男女は、私の部屋のクローゼット側
にある隣の部屋に入っていった。
パタン。
二人が部屋に入るのを音でしっかり確認
した後、毛布にくるまり携帯を握りしめて
クローゼットにこもり、自室と隣を隔てて
いる壁に耳を押し付ける。
「ねー、世奈ってさ、娘いるんでしょ??」
「んー、いるけどーぉ??」
「へー、なに、別居してるの??」
「んーん、一緒に住んでるわよ??
あの子、夜は大体居ないのよねー。お互い
干渉しないのよぉ。てゆーかー、関わり
たくないしぃ?顔が父親にそっくりだから
見たくないのよねー。あの子が憎いとかじゃ
ないんだけどーぉ。」