何故、泣くのだ。
私は、子猫を抱き上げたまま、柵を跨いだ。
いままでも、最低な人間だった。
最後まで、最低な人間でいよう。
せめて、と私は、子猫がちゃんと死ねるように
抱き締めはせず、手を繋ぐ事にした。
落ちる瞬間に、子猫の前足だけを掴んで
いられるように、右腕で子猫の身体を支え、
左手で前足を握った。
でも、出来なかった。
飛び降りた瞬間、何故か。
子猫をぎゅっと抱き締めてしまった。
そして願ってしまった。
この子だけは、助けてほしい。と。
落ちている瞬間瞬間がスローに見える。
何の訳か、私には子猫を見つめる余裕が
あった。子猫は、私を見ていた。
子猫は目を閉じる。
私も目を閉じる。
痛い思いをしなくてすむことに感謝しながら
私は、意識を手放した。
この子の元の飼い主も、
私の母も、
私たちに何か感じてくれるように。