〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
ゆっくりとボーカルの人に近づき、マイクを借りる。
…借りる、で合ってると思う。
うん、借りる。
曲は、ちょうど二番の前の前奏で、その前にわたしはボーカルと話していた。
「マイク貸してください。」
「えぇ!?」
「…勝手に借ります。」
わたしはボーカルのマイクをするりと抜き取り、二番を歌い出した。
『痛いなんて感じて 現実から目を逸らした
ホント馬鹿だよねなんにも変わりゃしないのに
don't stop don't stop ホラ前向きに
want to step want to step 退屈なんて
アタマん中で書き換えろ!
毎日なんて 見方次第で
どうにでもなったり するもんじゃない?
飛べやしないって 決めつけないで
勇気を出して 踏み出してみて
まだ間に合う そう 遅くなんかないよ』
…やっちまった…!!
二番を歌いきって、間奏に入ったところで正気に戻った。
慌てて周りを見ると、案の定
「え、声わふわふさんに似てない!?」
「歌うまっ!」
「ボーカルの人より…」
なんて声が。
うわぁ~~~~~~~~~~~~…
もう、こうなったらやけくそだ。
わたしは最後まで歌いきってやった。