〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
皆が走るわたしを目で追っている。
後ろから先生の声。
「そこのキミ、待ちなさい!!」
嫌です!
今待ってたら絶対怒られる~~~~~…!
機材いじったり、歌に乱入したり。
思えばわたし、やりたい放題やってるじゃん!!
うわわ~~~~~~~!
今更ながら、恥ずかしい!!
わたしは何とか先生から逃げ切り、しばらくしてからまた、視聴覚室に戻った。
やっぱり、怒られなきゃ。
はぁ、と視聴覚室の扉の前でため息をつく。
そして、中に入ろうと腕に力を込めたとき。
『♬~♪~♬~♪~♬~♪~♬~♪~♬~』
綺麗なキーボードの音が聞こえてきた。
そして、ボーカルの声。
『今日最後の4バンド目、[MAN]です!!
俺達のウリは、このキーボード!
彼、めちゃめちゃうまいんすよー!!』
そこでまた、キーボードがなる。
『…ね?
イケメンな天才キーボード、一ノ瀬俊~!!(ichinose shun)』
一ノ瀬、俊…。
ホントに、上手い。
指が早く動くとか、そんなんじゃなくて。
音の一つ一つが、玉になって弾けたようだ。
とにかく、聞いていて心地よかった。
ドア越しにでもわかる、一ノ瀬さんのオーラ。
きっと、背が高くて、黒髪で…
なんて妄想を膨らませていたら、手が勝手に視聴覚室の扉を開けた。