〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
この音…
後ろを向くと、一ノ瀬先輩が舞台袖から出てきてキーボードを弾いていた。
そして、メロディーを弾きながら歌いだした。
『綺麗な折り花 なんて美しく儚い
まるでわたしの恋 そのままの形にしたみたい
あなたが 好きでした…』
一ノ瀬先輩は最後まで歌い、なんとかその場は防げた。
そのイベントは、1バンド一曲だったから、それで終わりだ。
舞台袖に降り、わたしはほっと息をつく。
と同時に、ものすごい怒号がとんできた。
「オマエどういうつもりだ!?
なんで歌わなかった!!!
自分の歌だろ!!
歌詞忘れたんじゃあるまいし…!
なぜ、何で歌わなかった!!!」
いっきにまくし立てられて、涙が浮かんだ。
「ちょ、俊…
言い過ぎだって。
誰にだって緊張して声が出なくなることくらい…」
「コイツが今まで緊張で歌えなくなったことがあるか!?
オマエ真面目にやってねーんじゃねーの!?
オフザケでやってんなら退学しろ!!!!!!!!!!!」
確かに、歌詞を忘れたわたしが悪い。
でも、そこまで怒らなくても…
「…し、…なに、ですか…?」
「なんだ!?
言い訳してんなら────…」
「わたしそんなに真面目にやってないように見えますか!!!!?」
そう言って、ステージに登った衣装のまま舞台袖を飛び出した。